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永住ビザ申請で提出する書類のうち、審査に大きな影響を与えるのが「永住理由書」です。この記事では書くべき項目やそれぞれの内容、注意点などを中心に、永住理由書について詳しく解説していきます。
永住理由書とは、その名の通り「永住ビザを申請する(=永住権の取得を希望する)理由」を記載した書類です。永住ビザの申請は他の在留資格の申請と比べて特に困難とされていますが、だからこそわざわざ申請する人には「理由」があるはずです。
永住理由書には、その理由を「自分の言葉で」記載します。これは審査官の心証に影響を与え、審査の行方も大きく左右するものです。これはある意味、永住ビザ申請で最も重要な書類といえるかもしれません。
永住理由書の提出を義務付けられているのは、現在の在留資格が就労系(就労ビザ)の外国人です。これに対し身分系の在留資格、具体的には日本人・永住者・特別永住者の配偶者等(配偶者ビザ)を持つ人については、永住理由書の提出は義務付けられていません。
この理由として考えられるのは「配偶者が安定した結婚生活のために永住権を欲しがるのは当然」ということです。一方、すでに就労ビザを持つ人が「永住権を欲しがる理由」場合、その理由にはさまざまなものが考えられるでしょう。このため何のために永住ビザを申請するのか、本人の言葉で(永住理由書で)説明する必要があるのです。
もちろん、配偶者ビザを持つ人が永住理由書を提出するのはまったく問題ありませんし、むしろ申請が有利になる可能性もあります。配偶者ビザを持つ申請者が何らかの理由で永住理由書の追加提出を求められるケースもあるため、そのような余計な手間や時間を防ぐためにも、最初から永住理由書を提出しておく方が良いでしょう。
永住理由書には「永住ビザを希望する理由や動機」を記載します。具体的な書き方や文字数などの指示はありませんが、A4用紙1〜2枚程度(2000〜4000文字程度)にまとめるのが一般的です。文字数は多ければ多いほど良いというわけではありませんが、あまり短いと「意欲が薄い」とみなされ、審査で不利になる可能性もあるため注意してください。
審査官の心証をできるだけ良くするためにも、以下に挙げる項目をきちんと検討して、書くべきことや有利なことを残さず書くようにしましょう。
母国での学歴や、来日から現在までの経緯についておおまかに説明します。ありのままの事実を書くのはもちろんですが、過去や現在の在留資格申請で提出した書類と矛盾がないよう、内容をしっかりチェックしてください。
記載する経緯は「日本に来た日以降」が中心となりますが、申請人がどこで生まれてどのように育ち、どうして日本にやって来ることになったのかなど、来日のきっかけとなる経緯にも触れておくと良いでしょう。
勤務している会社の事業内容や自分が担当する業務、収入などを説明します。もし現在の在留資格が就労ビザなら、許可されている活動内容が実際の勤務先や仕事内容と一致していることが絶対に必要です。活動内容に矛盾があれば永住申請はもちろん、現在の在留資格も危うくなるためしっかり確認してください。
ちなみにこの項目の狙いは「日本で安定して生活できる」ことのアピールです。ですから会社の状態や現在の仕事内容、社内での立場、月収(年収)などをできるだけ詳しく書く必要があります。家族がいる場合は世帯収入についても触れておきましょう。
なお仕事内容について書く際は、だれが読んでも理解できるように専門用語をできるだけ使わず、簡単な言葉で説明することを心がけてください。会社のパンフレットやホームページなどのコピーを添付するのもOKです。
永住ビザの申請要件には、公的年金や健康保険に(一定期間以上)加入していることも含まれます。ここでは原則として「直近5年間」、年金や健康保険の未納がないことを説明しますが、納付状況を証明する書類も別途提出するため、その内容と矛盾しないよう注意が必要です。
年金・保険の加入状況は厳しく判定されるため、もし数年以内に未納や滞納がある場合は専門家に相談するなどして、申請すべきかどうか慎重に検討してください。
「現在の仕事や生活状況」とも関連しますが、永住していくうえで必要十分な資産(預金など)を持っているかどうかも大きなアピールポイントです。
ちなみに申請人が「日本人の平均給与」相当、あるいはそれ以上をもらっている人なら、貯蓄や定期預金といった資産はあまり重視されません。もちろん書くことで有利になる可能性もあるため、書ける内容があるなら積極的に書いてください。
申請書類として提出する「身元保証書」は身元保証人が作成(記入)しますが、永住理由書の方でも申請人の口から、身元保証人との関係や身元保証人を引き受けてもらった経緯などについて説明します。
内容が真実であることをアピールするには、身元保証人から推薦状をもらって添付するのも効果的です(あくまでも補助的な資料なので、可能な範囲で問題ありません)。
永住理由書の中でも、特に重要な項目です。ここではなぜ日本で永住したいのかを説明します。日本との関わりや将来の目標、特に「今後どのように日本に貢献していくのか」といった内容も盛り込むと良いでしょう。
作成する際は、テンプレートをコピーしたような文章ではなく「自分の言葉で」「ていねいに」説明することが大切です。
書くべき内容に決まりはありませんが、過去に申請が許可された人の多くは以下のようなことを書いています。
また、理由書の最後には「ここまでで述べたように、私の生活基盤は日本であり、今後も日本国の住民として法律を遵守し、勤勉に働き、誠実に暮らしていく所存でございます。」という文言を記載し、理由書を締めくくります。
以上に挙げたものの他にも、アピールポイントがあれば積極的に記載して構いません。特に日本語力は申請要件になっていないものの、能力が高ければある程度有利になります。日本語能力試験N1で高得点を取っているなら、そのことを書くのも良いでしょう。
自分が日本の法律やルールを守る「善良な外国人」であることをアピールするのも効果的です。たとえば無事故無違反の運転記録証明書を添付したり、自治体や企業からもらった表彰状や感謝状などを添付することもできます。
一方、もし過去に違反歴(たとえば交通違反)があるなら「ウソ」をつくのはNGです。こうした記録は審査時にばれてしまうため、もし違反歴などがあるなら、専門家とよく相談してください。過去に提出した在留資格の申請書類に間違いがある場合も同様です。
永住理由書を書く際は、いくつかのポイントに注意することで許可の可能性がぐっと上がります。逆に押さえるべきポイントでミスをすると、内容以外の部分で申請が不利になるため注意が必要です。
出入国在留管理庁では、永住ビザの許可基準についてガイドラインを公表しています。このガイドラインは定期的に更新されるため、必ず最新のものを確認しながら永住理由書を作成しましょう。
現時点の最新ガイドラインは『永住許可に関するガイドライン(令和元年5月31日改定)』からダウンロードできます。なお日本語以外にも、英語・中国語(簡体字)・中国語(繁体字)・韓国語・ポルトガル語・スペイン語・タガログ語のガイドラインが用意されているため、これらの言語が母国語の方は必ず確認してください。
永住理由書は手書きでもパソコンでも構いませんが、いずれの場合も「読む相手」のことを考えて、わかりやすい文字、わかりやすい表現を心がけることが重要です(特に専門的な内容を書く場合は専門用語を使いすぎないよう注意)。内容ごとに項目を分けて、見出しや小見出しを付けるのも効果的です。
インターネット上には、個人が作成した永住理由書のテンプレートが多数掲載されています。これらのテンプレートを参考にするのは構いませんが、まるごとコピーするのはNGです。またテンプレートによっては内容が怪しいものもあるので、(どうしても利用したい場合は)複数のテンプレートを比較検討したほうが良いでしょう。
永住理由書は原則として日本語で提出します。もちろん母国語で作成しても構いませんが、その際は必ず日本語に翻訳したものも作成して、一緒に提出します。
永住ビザの申請書類は、理由書以外にもさまざまなものがあります。
永住ビザを申請できるのは、中長期の在留資格ですでに一定以上日本で生活している外国人です。この「中長期の在留資格」には就労ビザや配偶者ビザなどが含まれ、その種類によって永住ビザの申請書類も変わってきます。
詳しくは出入国在留管理庁ホームページの『永住許可申請』や、当事務所のコラム『永住ビザを申請できる人とは?申請人ごとの必要書類についても解説』『永住許可申請書の書き方にコツはある?身元保証書や理由書についても解説!』『永住ビザに必要な身元保証人とは?必要な年収など各種要件についても解説』を参考にしてください。
身元保証人になるにはいくつかの「条件」があります。また身元保証人を引き受けた人には、金銭面の援助を含む「道義的な責任」が課されます。申請人はもちろん身元保証人を依頼された人も、ぜひこの記事を参考に身元保証人という制度について理解を深めてください。
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