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日本に滞在する外国人の活動が一般的な就労ビザや身分系ビザに当てはまらない場合、「特定活動」という個別の在留資格が必要です。この記事では特定活動ビザの主な種類と具体例、特定ビザによる就労の可否や申請方法などについて説明していきます。

 

特定活動ビザとは?

外国人が日本に滞在するには、必ず活動内容に応じた在留資格が必要です。しかし来日する外国人の中には、一般的な就労ビザや身分系ビザの枠に収まらない活動内容(滞在理由)の人も少なくありません。そのようなときに利用されるのが「特定活動」ビザです。

 

特定活動ビザは「法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動」を対象としています。つまり他の28種類の在留資格に含まれない「その他の活動」が特定活動ビザの対象です。

 

新たな在留資格の指定には法改正が必要となり、相当な時間がかかります。しかし特定活動ビザは法務大臣が内容をその都度指定できるため、法改正の手間はありません。外国人の活動が多様化する現在、特定活動ビザは「非常に便利な在留資格」といえるでしょう。

 

特定活動の種類

特定活動ビザが「その他の活動」に対応しているといっても、大まかな内容は「出入国管理及び難民認定法(入管法)」の中で指定されているか、法務大臣があらかじめ告示、もしくは慣例化しています。ここではそれぞれの内容について説明します。

 

入管法に規定された特定活動(法定特定活動)

入管法の中で指定されている特定活動は「法定特定活」とも呼ばれ、大きく分けて3種類の内容があります(入管法 別表第一の五より)。

 

①特定研究活動

日本国内の公私の機関(法務大臣が指定するもの)との契約に基づき、特定分野に関する研究や研究の指導・教育を行う活動。もしくは、特定分野の研究や指導・教育を行う事業を経営する活動。

 

②特定情報処理活動

日本国内の公私の機関(法務大臣が指定するもの)との契約に基づき、自然科学・人文科学分野の技術や知識を必要とする情報処理関連の業務に従事する活動。

 

③特定研究等家族滞在活動及び特定情報処理家族滞在活動

上記①または②の外国人に扶養されている配偶者や子どもが日本で行う活動。

 

告示特定活動

法務大臣があらかじめ告知している活動内容は、令和3年7月時点で46種類です(以下の表には「49号」までありますが、11号・13号・14号は削除されています)。

1号 外交官・領事官の家事使用人
2号の1 高度専門職・経営者等の家事使用人

2号の2

高度専門職の家事使用人
3号 台湾日本関係協会の在日事務所職員とその家族
4号 駐日パレスチナ総代表部の職員とその家族

5号の1

ワーキングホリデー
5号の2 台湾人のワーキングホリデー

6号

アマチュアスポーツ選手

7号

6号のアマチュアスポーツ選手に扶養されている配偶者あるいは子
8号 外国人弁護士
9号 インターンシップ

10号

イギリス人ボランティア

11号

※削除
12号 短期インターンシップを行う外国の大学生
13号 ※削除
14号 ※削除
15号 国際文化交流を行う外国の大学生
16号 インドネシア人看護研修生
17号 インドネシア人介護研修生
18号 16号のインドネシア人介護研修生の家族
19号 17号のインドネシア人介護研修生の家族

20号

フィリピン人看護研修生
21号 フィリピン人介護研修生(就労あり)
22号

フィリピン人介護研修生(就労なし)

23号 20号のフィリピン人看護研修生の家族
24号 21号のフィリピン人介護研修生の家族
25号 医療・入院
26号 25号で治療を受ける者の日常生活の世話をする活動

27号

ベトナム人看護研修生
28号 ベトナム人介護研修生(就労あり)
29号 ベトナム人介護研修生(就労なし)
30号 27号のベトナム人看護研修生の家族
31号 28号のベトナム人介護研修生の家族
32号 外国人建設就労者
33号 在留資格「高度専門職」で在留している外国人の配偶者の就労
34号 高度専門職外国人あるいはその配偶者の親
35号 造船労働者
36号 研究・教育者あるいは、研究・教育に関する経営者
37号 情報技術処理者
38号 36号、37号の活動で在留する者に扶養される配偶者又は子
39号 36号、37号で在留する者あるいはその配偶者の親
40号 観光・保養

41号

40号で在留する外国人の家族
42号 製造業に従事する者
43号 日系四世
44号 外国人起業家
45号 44号外国人の扶養を受ける配偶者又は子
46号

4年制大学又は大学院の卒業生でN1以上の日本語力を有する者

※出入国在留管理庁:留学生の就職支援に係る「特定活動」(本邦大学卒業者)についてのガイドラインをご参照ください

47号 46号で在留する外国人の扶養を受ける配偶者あるいは子
48号 東京オリンピックの関係者

49号

48号で在留する外国人の扶養を受ける配偶者あるいは子

法務大臣による告知は都度見直されています。特定活動ビザの取得を目指す場合は常に最新の情報を確認してください。

 

告示外特定活動

告示外特定活動とは「慣例的に認められている活動」のことで、具体的には以下のような内容が含まれています。

 

①日本に在留する外国人が呼び寄せた「親」

日本には、外国人が親を呼び寄せるための在留資格(親に与えられる在留資格)は存在していません。しかし親が高齢で、しかも本国に両親の面倒をみる人がいないケースなどでは「人道上の配慮」として、親に対し特定活動ビザが与えられることがあります。

 

②就職が決まらないまま卒業した留学生

日本での就職先が決まらないまま卒業した留学生は、卒業前から引き続き就職活動をしている場合に限り最長1年(初回6か月・更新後6か月)まで特定活動ビザが認められます。なお専門学校を卒業した留学生は、大学・大学院・短大・高専を卒業した留学生よりも審査基準が厳しくなります。

参考:留学ビザから就労ビザへの変更方法や注意事項について解説

 

③出国準備期間

何らかの理由で在留資格の更新申請が不許可になった場合、日本を出国するまでの間(原則30日以内)は特定活動ビザでの滞在が認められます。

 

④人道上の配慮が必要な場合

その他「人道上の配慮」から一時的な滞在が許されることがあります。たとえば難民申請中の外国人に対し、審査結果が出るまで特定活動ビザを認めるといったケースです。

 

特定活動ビザの在留期間

特定活動ビザの在留期間は、5年・3年・1年・6か月・3か月・法務大臣が個々に指定する期間(5年を超えない範囲)の6種類です。

特定活動ビザで就労するには?

特定活動ビザでは、個別の内容によって就労できるかどうかが決まります。たとえば入管法に規定された特定活動(法定特定活動)の場合、32号の「外国人建設就労者」なら就労が認められ、25号の医療・入院なら認められない、といった具合です。

日本の事業者が外国人を雇用する場合は、この点を「在留カード」と「指定書」でしっかり確認する必要があります。

 

在留カードの記載

在留カードは外国人に与えられる身分証明書で、「在留資格」や「在留期間」が記載されています。ただし「特定活動」という在留資格名だけでは、(すでに説明した通り)その外国人が就労できるかどうかはわかりません。

参考:在留カードとは?制度の仕組みや有効期間・更新手続について詳しく解説

ちなみに特定活動の場合、在留カードの表面には「特定活動」、裏面には「指定書により指定された就労活動のみ」と記載されています。

 

指定書の記載

指定書というのは外国人のパスポートに添付される書類のことで、外国人の氏名・国籍のほかに「特定活動として認められる活動」の内容が記載されています。就労できる活動であればその内容、就労できない場合は「報酬を受ける活動を除く」と書かれています。

 

特定活動の申請方法

特定活動の申請方法は個々の活動内容によって違います。また活動内容によっては「入国前の申請」ができないものもあります。たとえば就職活動中の卒業生や出国準備期間の外国人に認められる特定活動ビザは、その典型例です。

 

逆に告示特定活動に該当する特定活動(46種類)は、入国前の申請が可能です。申請手続の流れは大まかに以下の通りで、他の在留資格とほとんど変わりません。

 

①必要書類を揃えて「在留資格認定証明書」を申請する

②在留資格認定証明書を提示して「ビザ」を申請する

③在留資格認定証明書とビザを提示して入国する(在留カードと指定書の発行を受ける)

 

活動内容に応じた必要書類は、出入国在留管理庁のサイト「在留資格「特定活動」(例,外交官等の家事使用人,アマチュアスポーツ選手及びその家族,インターンシップ,特定研究活動,特定情報処理活動,本邦大学卒業者及びその家族等)の場合」を確認するか、出入国在留管理庁、もしくは専門家に問い合わせてください。

審査基準

特定活動ビザは他の在留資格に当てはまらない活動内容を対象としているため、審査基準はそれぞれの内容ごとに異なります。個別の審査基準もほとんど公開されていないため、実施に申請を行う場合は専門家のアドバイスやフォローを受けることをお勧めします。

審査期間

特定活動ビザの審査期間(標準処理期間)は、おおむね1か月程度です。ただし申請の内容や申請の時期によって審査期間が延びることもあります。もちろん提出した書類に不備や疑わしい点がある場合も審査期間は大きく伸びます。

なお特定活動を含め、各在留資格の処理期間は出入国在留管理庁のサイト「在留審査処理期間」で確認できるので、参考にしてください。

 

告示外特定活動の申請について

入国前の申請ができない告示外特定活動については、別の在留資格で入国した後に「在留資格変更許可申請」を行うことになります。

たとえば留学生が卒業後も就職活動をする場合は「留学」ビザからの変更、在留資格の更新が不許可になって出国準備をする場合は、不許可になった在留資格からの変更、という具体です。

まとめ

特定活動ビザは、計29種類の在留資格の中でも特殊な在留資格です。特に「就労できるものと就労できないものがあること」「入国前の申請ができるものとできないものがあること」には十分注意が必要です。特定活動の取得を目指す方は、ぜひ専門家に相談するようにしてください。

 

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富樫 眞一
資格

2003年 技術士(環境部門)登録
2003年 薬学博士号登録

2019年 行政書士登録

2019年 入国管理局申請取次行政書士登録

2020年 特定行政書士登録

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