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数ある就労系在留資格の中でも、特に多くの外国人に利用されている「技術・人文知識・国際業務(技人国)」。この記事では技人国の内容や具体例、申請要件や申請に必要な書類などについて詳しく説明していきます。
「技術・人文知識・国際業務(技人国)」というのは、就労系在留資格のひとつです。大学などの卒業者が、理系・文系などそれぞれの専攻分野を生かした仕事に就く際に必要となるもので、計19種類の就労系在留資格の中でも特に多くの外国人に利用されています。
ここでは「技術」「人文知識」「国際業務」に分解して、それぞれの意味を説明していきます。
技術とは理学や工学など、主に理系分野を専攻した人が就く業務のことです。たとえばプログラマーやシステムエンジニア、CADオペレーター、機械工学系の技術者、建築・土木の設計者など、理系ならではの技術を生かした開発系の仕事が中心となります。
人文知識とは法学や経済学など、主に文系分野を専攻した人向けの業務のことです。たとえば法律事務所で弁護士を補助するパラリーガルをはじめ、マーケティングや広報、経営コンサルタントといった仕事が挙げられます。
国際業務とは外国人ならではの強みや感性を生かした業務のことで、たとえば民間の語学教師や通訳・翻訳などが典型例として挙げられます。また「服飾デザイナー」や「広告デザイナー」なども国際業務の一部です。
技人国は大学などでの専攻分野と就職先の業務内容が密接に関係するため、特に「学歴要件」が重視されています。ここでは学歴要件とその他の要件に分けて説明していきます。
技人国が認められるのは、原則として以下の3パターンのどれかに当てはまる外国人です。
※外国の専門学校は対象となりません
また上記の学歴(学位や称号)がなくても、技人国の対象となる二つの特例があります。
一つ目の例外は「一定以上の実務経験」です。「技術・人文知識」の仕事に就く場合は10年以上、「国際業務」の仕事なら3年以上の実務経験を証明することで、技人国の申請が可能となります。
二つ目の例外は「情報処理技術の資格」です。日本の「情報処理安全確保支援士試験」や「情報処理技術者試験」をはじめ、中国、フィリピン、ベトナム、ミャンマー、台湾、マレーシア、タイ、モンゴル、バングラデシュ、シンガポール、韓国の各国でそれぞれ実施される情報処理技術系の資格を取得すれば、技人国の申請要件を満たすことができます。
学歴要件以外の要件(確認事項)は6つです。
①学歴と職務内容が関連していること
技人国の審査では、大学などで学んだ内容と日本で就く仕事が密接に関連していることが求められます。専門分野と業務内容が一致しない場合、技人国の在留資格は許可されません。
・不許可の具体例
声優学科を卒業後、外国人客が多く訪れるホテルに入社して、ロビースタッフとして翻訳・通訳業務に従事するため在留許可を申請
→ 専攻した科目との関連性が認められないため不許可
②業務に専門性があること
業務内容に専門性があることも重要な要素です。業務が専門知識や専門技術を必要としない「単純作業」の場合、許可は受けられません。
・不許可の具体例
教育学部を卒業後、弁当の製造・販売業務を行っている企業に入社して、現場作業員として弁当の箱詰め作業に従事するため在留許可を申請
→ 人文科学分野の知識を必要とすると認められないため不許可
③日本人と同等以上の報酬であること
業務内容が同じであれば、外国人社員に日本人社員と同等以上の報酬を支払う必要があります(申請時に提出する雇用契約書等で確認します)。
・不許可の具体例
日中通訳翻訳学科を卒業後、輸出入業を営む企業に入社して、月額17万円の報酬で海外企業との契約書類の翻訳業務や商談時の通訳に従事するため在留許可を申請
→ 同時に採用され、同種の業務に従事する日本人社員の報酬が月額20万円だったため、日本人と同等額以上の報酬を受けているとはいえず不許可
④勤務先の経営状態が安定していること
外国人を雇用する企業には、従業員にきちんと報酬を支払える程度の経営状態が求められます(申請時に提出する財務諸表等で確認します)。特に設立されたばかりの企業や中小企業ほど、より細かい審査を受けるのが一般的です。
⑤外国人を雇用する必要性があること
専門技術を持つ外国人を雇う以上、その会社には一定の規模や業務内容が求められます。たとえば少人数の会社なのに労務管理専門の外国人社員を雇ったり、外国人の顧客がほとんどいないのに通訳として外国人社員を雇うような場合、許可は受けられません。
・不許可の具体例
情報システム工学科を卒業後、料理店経営を行う企業に入社して、月額25万円の報酬でコンピューターによる会計管理や労務管理などの業務に従事するため在留許可を申請
→ 従業員が12名という規模のため、雇用の必要性があるとはいえず不許可
⑥素行が不良でないこと
申請する外国人本人の「素行」も重要です。具体的には犯罪行為で処罰歴がないかどうか、納税義務を果たしているか、在留許可に従って行動しているかなどが審査されます。
・不許可の具体例
商学部を卒業後、貿易業務・海外業務を行っている企業に入社して、海外取引業務に従事するため在留許可を申請
→ 「留学」の在留資格で在留中、1年以上継続して月200時間以上アルバイトをしていたことが明らかとなったため不許可 ※留学生のアルバイト(資格外活動)は1週間あたり28時間以内が原則
技人国の申請手続きは、就職先企業・団体の規模などによって「カテゴリー1」〜「カテゴリー4」に分けられています。ここではカテゴリごとに必要な書類と、申請の流れについて説明します。
【すべてのカテゴリーに共通】
①在留資格認定証明書交付申請書
②写真(縦4cm×横3cm)
③返信用封筒(404円分の切手を貼り付けたもの)
④カテゴリーのいずれかに該当することを証明する文書
⑤(専門学校の卒業生)専門士又は高度専門士の称号を付与されたことを証明する文書
【カテゴリー3と4に共通】
⑥活動の内容等を明らかにする資料
⑦学歴・職歴その他経歴等を証明する文書
⑧登記事項証明書
⑨事業内容を明らかにする資料
【カテゴリー3のみ】
⑩直近の年度の決算文書の写し
【カテゴリー4のみ】
⑩直近の年度の決算文書の写しか事業計画書(新規事業の場合)
⑪前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表を提出できない理由を明らかにする資料
就労系在留資格の審査期間は、申請者本人や会社の事情に応じて大きく変わります。技人国の平均処理期間は新規申請で約50日、変更申請で約40日程度と言われますが、実際には1週間程度から半年以上と非常に幅があります。一般に、大企業ほど審査期間が短くなるようです。
技人国で在留できる期間は3か月・1年・3年・5年のいずれかです。ほとんどの場合、新規申請時に認められる在留期間は1年で、在留資格の更新を繰り返すうちに3年や5年に延びていくのが一般的です。なお更新に上限はありません。
技人国とよく似た在留資格に「高度専門職」があります。どちらも申請者の学歴などに関連した業務に就く資格ですが、高度専門職は外国人の学歴や資格などに応じて「ポイント」が付与され、合計点数が一定以上の人に特別な優遇措置を与えるというものです。
ちなみに初めて申請する人は「高度専門職1号」の対象、1号で3年以上活動した人は「高度専門職2号」の対象です。
高度専門職の優遇措置(メリット)は、以下の6つになります。
①在留期間が「5年」もしくは「無期限」に延長
②永住許可要件の緩和(本来なら10年以上の日本滞在が必要なのに対し、1年もしくは3年で永住許可申請が可能)
③入国・在留手続の優先処理(入国審査の処理期間が大幅に短縮される)
④配偶者の就労許可(「教育」「技人国」などに該当する活動が、学歴要件などを満たさなくても認められる)
⑤親の帯同(一定の条件があります)
⑥家事使用人の帯同(一定の条件があります)
一方で高度専門職には、ポイントの立証手続きが煩雑というデメリットもあります。もし「一律5年」やその他のメリットに魅力を感じないなら、技人国の方が手続きが簡単で好都合と言えるかもしれません。
今回は技人国をテーマに、制度の仕組みや具体例、必要書類や高度専門職との違いなどを紹介しました。日本で働く外国人の大部分が利用している非常にポピュラーな在留資格ですが、審査内容は決して簡単ではありません。この記事や出入国在留管理庁webサイトの情報などを参考に、しっかりと準備をするようにしましょう。
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2019年 入国管理局申請取次行政書士登録
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