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外国籍の人が日本国籍を取得するには「帰化」の手続きが必要です。とはいえ手続きには多くの条件(要件)が設定されているうえ、申請の際は国内外でさまざまな書類を揃えなくてはなりません。

今回の記事では、こうした帰化申請の要件や必要書類、許可取得までにかかる費用などについて解説していきます。

帰化とはどのようなもの?

帰化とは「国籍を取得する原因」のひとつです。

国籍法によると、日本国籍を取得するには3つの方法があります。1つ目は「日本国民である父または母からの出生」(第2条)、2つ目は「日本国民が認知した子による届出」(第3条)、そして3つ目が「帰化」(第4条)です。

このうち帰化には、さまざまな要件が設けられています。ただし要件を満たしたからといって自動的に帰化が認められるわけではなく、「帰化申請に対する法務大臣の許可」を受けることが必要です。

法務大臣による許可が下りると「官報にその旨を告示」され(第10条第1項)、その日から帰化の効力が発生します(第10条第2項)。

なお、帰化には「普通帰化」と「特別帰化」の二種類があります。

 

普通帰化

「日本国民との特別なつながり」などを持たない外国人による、いわゆる一般の帰化手続きです。普通帰化には7つの要件があり、帰化申請を行うにはすべての要件を満たす必要があります。

特別帰化(簡易帰化)

婚姻関係など、日本国民との特別なつながりを持つ外国人を対象とした帰化制度です。「つながり」の内容に応じて、普通帰化で求められる要件のいくつかが緩和されます。

普通帰化の7つの要件

普通帰化の7つの要件のうち、6つまでは国籍法5条第1項の中に列挙されています。ここではそれぞれの要件について見ていきましょう。

 

住所要件

最初の要件は「住所要件」と呼ばれるものです。国籍法第5条第1項第1号には、次のように書かれています。

 

引き続き五年以上日本に住所を有すること。

 

ここにある通り、帰化申請を行うには申請の時点で「5年以上」日本に住んでいることが必須です。

また「引き続き」という言葉が入っているため、仮にトータルで5年以上日本に住んでいても、途中で長期間日本を離れていたり出入国を頻繁に繰り返しているような場合は「要件を満たさない」と判断される可能性もあります。

 

能力要件

2番目の要件は「能力要件」です。国籍法第5条第1項第2号には次のように書かれています。

 

二十歳以上で本国法によって行為能力を有すること。

 

これは民法の「成年」規定と関係のある条文です。民法では「年齢二十歳をもって、成年とする。」(第4条)とあり、それ以降、契約などの法律行為を単独で有効に行える(行為能力がある)とされています。

帰化申請も法律行為である以上、この基準を満たしていることが必要です。加えて(帰化申請者の)本国の法律によっても、行為能力が与えられている必要があります。

ちなみに民法の成年規定は2018年6月13日に改正され、2022年4月1日から成年年齢が「18歳」となります。これにあわせて国籍法の規定も、2022年4月から18歳に変更される予定です。

 

素行要件

3番目の要件は「素行要件」です。国籍法第5条第1項第3号には次のように書かれています。

 

素行が善良であること。

 

素行が善良であるかどうかは、総合的な判断です。犯罪歴の有無はもちろん、納税義務を果たしているか、年金を納めているかなど「通常人を基準として,社会通念によって判断」されることになっています。

車を運転する場合は交通違反の履歴も考慮されるため、特に重大な違反をしたことのある人は要注意です。

 

生計要件

4番目の要件は「生計要件」です。国籍法第5条第1項第4号には次のように書かれています。

 

自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができること。

自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができること。

生活に困るようなことがなく,日本で暮らしていけることが必要です。この条件は生計を一つにする親族単位で判断されますので,申請者自身に収入がなくても,配偶者やその他の親族の資産又は技能によって安定した生活を送ることができれば,この条件を満たすこととなります。

 

重国籍防止要件

5番目の要件は「重国籍防止要件」です。国籍法第5条第1項第5号には次のように書かれています。

 

国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。

 

国籍法では「二重国籍」を認めていません。このため帰化を申請する人は申請の時点で無国籍であるか、帰化が認められた時点でそれまでの国籍を喪失する必要があります。特に申請者の本国が二重国籍を認めているような場合は要注意です。

ただし第5条第2項によると「外国人がその意思にかかわらずその国籍を失うことができない場合」は、その他の条件と照らし合わせて重国籍防止条件が緩和されるケースもあります。

 

憲法遵守要件

6番目の要件は「憲法遵守要件」です。国籍法第5条第1項第6号には次のように書かれています。

 

日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと。

日本政府に対するテロはもちろん、そのような思想を掲げる団体の関係者は帰化申請が認められません。

 

日常生活に支障のない程度の日本語能力

7番目の要件は「日常生活に支障のない程度の日本語能力」です。

この条件については国籍法に明記されていませんが、法務省の「国籍Q&A」によると「日常生活に支障のない程度の日本語能力(会話及び読み書き)を有していることが必要」とされています。普通帰化の7つの要件のうち、6つまでは国籍法5条第1項の中に列挙されています。ここではそれぞれの要件について見ていきましょう。

 

特別帰化の3つのパターン

特別帰化(簡易帰化)に該当する外国人に対しては、普通帰化の7つの要件のいくつかが緩和されます。どの要件が緩和されるかは、帰化申請者の置かれた環境や事情によって異なります。

住居要件が緩和されるケース

国籍法第6条によると、次の3つのケースでは「住居要件」が緩和されます。

 

日本国民であつた者の子(養子を除く。)で引き続き三年以上日本に住所又は居所を有するもの

これは主に、日本国籍を離れた両親(もしくは父親・母親)を持つ子供で、両親と一緒に外国籍になった人についての規定です。このような場合は「5年」とされていた住居要件が「3年」に緩和されます。

 

日本で生まれた者で引き続き三年以上日本に住所若しくは居所を有し、又はその父若しくは母(養父母を除く。)が日本で生まれた者

「親が外国籍で、日本で生まれた」子供や、「日本で生まれた外国籍の親」を持つ子供についての規定です。主に在日韓国人や在日朝鮮人の「特別永住者」がこれにあてはまります。この場合も住居要件が「5年」から「3年」に緩和されます。

 

引き続き十年以上日本に居所を有する者

特別永住者以外の在日韓国人や在日朝鮮人でも、留学生などとして10年以上日本に住んでいる人がこれにあてはまります。

 

住居要件・能力要件が緩和されるケース

国籍法第7条によると、次の2つのケースでは「住居要件」と「能力要件」が緩和されます。

 

日本国民の配偶者たる外国人で引き続き三年以上日本に住所又は居所を有し、かつ、現に日本に住所を有するものについては、法務大臣は、その者が第五条第一項第一号及び第二号の条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。

日本国民と結婚している外国人の場合、住居要件が「3年」に緩和されるうえ、能力要件が免除されます。

 

ちなみに「日本国民の配偶者」であることと「引き続き3年以上」日本に住んでいることは別の話なので、仮に結婚したばかりの人でも、すでに3年以上日本に住んでいれば要件を満たせる可能性があります。

 

日本国民の配偶者たる外国人で婚姻の日から三年を経過し、かつ、引き続き一年以上日本に住所を有するものについても、同様とする。

 

こちらは「日本国民と結婚して3年以上」の人が対象です。この場合、住居要件は「1年」に緩和されます。

 

住居要件・能力要件・生計要件が緩和されるケース

国籍法第8条によると、以下の4つのケースで「住居要件」「能力要件」「生計要件」が緩和されます。

 

日本国民の子(養子を除く。)で日本に住所を有するもの

日本に住んでいる外国人で、両親のどちらかが日本国籍を取得している場合は住居要件、能力要件、生計要件がすべて免除されます。

 

日本国民の養子で引き続き一年以上日本に住所を有し、かつ、縁組の時本国法により未成年であつたもの

本人が未成年のときに日本人の養子となっていた場合、住居要件が「1年」に緩和され、能力要件と生計要件が免除されます。

 

日本の国籍を失つた者(日本に帰化した後日本の国籍を失つた者を除く。)で日本に住所を有するもの

もともと日本国籍であったものの(帰化によって日本国籍を取得した人を除く)、いったん外国籍になった人が当てはまります。この場合も住居要件、能力要件、生計要件がすべて免除されます。

 

日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者でその時から引き続き三年以上日本に住所を有する者

外国籍の親が日本で子供を産んだ場合、もし本国が「出生地主義(生まれた場所を国籍地とする制度)」を採用していると、その子供は「無国籍」になります。このような人は居住要件が「3年」に緩和され、能力要件と生計要件が免除されます。

普通帰化の7つの要件のうち、6つまでは国籍法5条第1項の中に列挙されています。ここではそれぞれの要件について見ていきましょう。

 

帰化申請の流れ

帰化申請は、原則として以下の手順で行われます。

 

  1. 申請者本人が窓口(法務局)に出向き、書類一式を提出する
  2. 法務局から面接の日程連絡が来る(申請の1~3か月後)
  3. 指定の日時に法務局で面接を受ける(約1時間)
  4. 許可(官報で公示/本人に直接連絡)

 

1から4までの期間は、トータルで8か月から1年程度です。

 

帰化申請に必要な書類

帰化申請では「帰化許可申請書」に加え、さまざまな添付書類が必要です。申請者ごとに必要書類が変わってくるため、まずは窓口となる法務局に相談すると良いでしょう。

なお書類によっては、日本で取得するものと申請者の本国で取得するものがあります。

 

日本で取得/本人が作成する書類

  • 帰化許可申請書(申請者の写真が必要)
  • 親族の概要を記載した書類
  • 帰化の動機書
  • 履歴書
  • 生計の概要を記載した書類
  • 事業の概要を記載した書類
  • 住民票の写し
  • 納税を証明する書類
  • 収入を証明する書類
 

本国で取得する書類

  • 国籍を証明する書類
  • 親族関係を証明する書類
 

帰化申請の窓口

帰化申請の窓口は、申請者の住所地を管轄する法務局や地方法務局です。最寄りの法務局については、法務局のWEBサイト「各法務局のホームページ」から検索できます。

帰化申請にかかる費用

申請にかかる費用は、自分で申請を行うか、行政書士に手続きを依頼するかによって変わってきます。

自分で手続きをする場合

帰化申請では「申請手数料」のような費用は発生しません。

このため自力で申請を行う場合の費用は、住民票や預貯金の残高証明書などの取得費用(数百円〜数千円)のみとなります。

 

行政書士に依頼する場合

行政書士に手続きを依頼する場合は行政書士への報酬が発生します。

具体的な金額は行政書士事務所ごとに違いますが、日本行政書士連合会が5年に1度公表している報酬額統計(平成27年度)によると「平均費用」は以下の通りです。

 

被雇用者の帰化許可申請…平均187,235円

個人事業主及び法人役員の帰化許可申請…平均229,123円

特別帰化(簡易帰化)申請…平均182,784円

 

行政書士への報酬は決して安くはありませんが、そのぶん書類収集・書類作成の手間や時間を節約できるのが大きなメリットです。

 

まとめ

今回は日本国籍を取得する「帰化」制度について説明しました。普通帰化の7つの要件や特別帰化の3つのパターン、そして手続きの流れや必要書類など、いずれも重要なポイントばかりです。これから帰化申請を行う方はこの記事を参考にしつつ、専門家である行政書士の活用も視野に入れながら「スムーズな帰化許可取得」を目指してください。

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富樫 眞一
資格

2003年 技術士(環境部門)登録
2003年 薬学博士号登録

2019年 行政書士登録

2019年 入国管理局申請取次行政書士登録

2020年 特定行政書士登録

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