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外国人を雇う雇用主に義務付けられている「外国人雇用状況の届出」。正社員を雇う場合もアルバイトを雇う場合も等しく適用され、うっかり届出を忘れると罰金の対象にもなりかねません。この記事では外国人雇用状況の届出制度について、その内容と届出方法、注意点などについて詳しく解説していきます。

 

外国人雇用状況の届出とは?

「外国人雇用状況の届出」とは、外国人を雇用する事業主に義務付けられた届出制度です(もともとは努力義務でしたが、平成19年10月1日より義務化されました)。

 

届出の内容

外国人雇用状況の届出内容は「外国人の氏名」に加えて、以下のものが含まれます。

  • 生年月日
  • 性別
  • 国籍の属する国や地域
  • 資格外活動許可の有無
  • 在留カードの番号
  • 入管法別表第1の2の表に関連する特定産業分野(該当する在留資格の場合)
  • 特定法務大臣が指定する活動内容(在留資格が特定活動の場合)
  • 住所
  • 雇入れ/離職する事業所の名称と所在地
  • 賃金その他の雇用状況に関する事項
 

届出の対象となる外国人

外国人雇用状況の届出の対象となるのは、原則として「すべての外国人労働者」です。具体的には以下のような人たちが当てはまります。

 

外国人正社員

日本の事業主が「正社員」として雇用する外国人は、原則としてすべて届出の対象となります。また雇用契約を結んでいない場合も「実態として使用従属性がある」と認められれば届出の対象です。

使用従属性については、主に以下の基準で判断されます。

①「使用従属性」に関する判断基準

  • 指揮監督下の労働

  ・仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無

  ・業務遂行上の指揮監督の有無

  ・場所的時間的拘束性の有無

  ・代替性の有無(本人以外が労働を交代できるか)

  • 報酬の労務対償性(労働日数や勤務時間等と報酬が連動しているか)

 

②「労働者性」に関する判断基準

  • 事業者性の有無

  ・機械、器具、衣装等の負担関係

  ・報酬の額(業務内容が同等の正社員より報酬が多いか)

  • 専属性の程度(兼業禁止などの制限があるかどうか)
 
 

外国人派遣社員

外国人の派遣社員も届出の対象です。この場合は「派遣元」の事業主が届出をすることになります。ちなみに派遣先での就業期間のみ雇用関係が発生する登録型派の場合、新たな派遣先が決定する度に届出をしなければなりません。

 

外国人アルバイト

外国人の主婦や留学生が行うアルバイトも届出の対象となります。なおアルバイトを雇う場合は、必ず「資格外活動許可」の確認が必要です。

参考:資格外活動許可とは?概要から申請方法まで解説

外国人雇用状況の届出が不要なケース

外国人雇用状況の届出は、原則としてすべての外国人労働者が対象になります。しかし在留資格の種類によっては届出が不要なケースもあります。

 

  • 「外交」「公用」

外交ビザは外交官とその家族などに発行される在留資格、公用ビザは日本国政府が承認した外国政府や国際機関の公務に携わる人とその家族に発行される在留資格です。この資格を持つ外国人については、日本の組織と雇用関係を結ぶ場合でも外国人雇用状況の届出は不用です。

 

  • 「特別永住者」

特別永住者とは入管法で定められた29種類の在留資格のひとつではなく、「入管特例法(日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法)」に基づく特別な在留資格です。この資格を持つ外国人を雇用する場合も外国人雇用状況の届出は不用です。

参考:特別永住者とは?他の在留資格との違いや特別永住者証明書について解説

 

  • 「帰化」

帰化というのは日本国籍を取得することです(在留資格ではありません)。帰化した外国人は法律上「日本人」となるため、これらの人を雇用する場合は他の日本人の場合と同様、外国人雇用状況の届出は不用です。

参考:日本国籍を獲得するには?帰化申請の要件や必要書類について詳しく解説

 

外国人雇用状況の届出を提出するには

外国人雇用状況の届出は難しくありませんが、雇用保険の被保険者かどうか、オンライン(もしくはハローワークの窓口)で提出するかどうかなどによって提出書類や提出方法が異なります。

 

ポイント①:被保険者かどうかの違い

外国人労働者が「雇用保険の被保険者」かどうかで、届出する書類が変わります(後ほど説明)。ちなみに日本の雇用保険制度では、原則として労働者の国籍によって取り扱いは変わることはありません。あくまで日本人と同様、以下の条件で加入義務の有無が判断されます。

  • 31日以上、引き続き雇用されるか(31日に満たない場合、更新の可能性はあるか)
  • 1週間の所定労働時間は、20時間以上か

 

ポイント②:提出手段による違い

オンラインによって届出を提出するか、ハローワークの窓口で提出するかによって届出の方法・手順が変わります。

オンラインを利用する場合は、専用サイト(外国人雇用状況届出システム)からID登録をします(操作方法については「外国人雇用状況届出システム操作マニュアル」を参考にしてください。)

過去に一度でもハローワークの窓口で届出を行っていると専用サイトでID登録できないため、あらためてハローワークに問い合わせる必要があります。

 

具体的な提出方法

 

①外国人が被保険者/オンラインで届出

「外国人雇用状況届出システム」にログインして、「雇用保険被保険者社資格習得届/資格喪失届」と「雇用保険被保険者資格取得届、資格喪失届外国人労働者在留カード番号記載用(別様式)」を入力・添付します。

 

②外国人が被保険者/ハローワーク窓口で提出

事業所を管轄するハローワークの窓口で、「雇用保険被保険者社資格習得届/資格喪失届」と「雇用保険被保険者資格取得届、資格喪失届外国人労働者在留カード番号記載用(別様式)」を記入・提出します。

 

③外国人が被保険者ではない/オンラインで届出

「外国人雇用状況届出システム」にログインして、「外国人雇用状況新規登録」もしくは「外国人離職情報登録」のページから必要情報を記入します。

 

④外国人が被保険者ではない/ハローワーク窓口で提出

事業所を管轄するハローワークの窓口で、「雇入れにかかる外国人雇用状況届出書/離職にかかる外国人雇用状況届出書(雇用対策法施行規則様式第3号)」を記入・提出します。

 

いずれの場合も、記入事項は外国人の氏名や生年月日、在留資格、在留期間、資格外活動許可といった基本的な内容ばかりです。ただし在留カードやパスポートの記載内容と矛盾してはいけません。記入を行う際は必ず在留カード等を確認しながら入力するとよいでしょう(在留カードやパスポート自体、もしくはその写しを提出する必要はありません。

 

提出期限

外国人雇用状況の届出には、以下のように提出期限が設定されています。

 

  • 被保険者の場合:雇用や離職があった日の「翌月10日」
  • 被保険者でない場合:雇用や離職があった日の「翌月末日」

 

外国人雇用状況の届出に関する注意点

外国人雇用状況の届出を行う際は、以下の3点に注意が必要です。

届出をしないと30万円の罰金

届出を行わない、もしくは虚偽の届出をした場合は「30万円以下」の罰則が科されます。うっかりミスで届出を忘れた場合も罰則の対象となるため、万一提出期限内に届出ができなかった場合は、ただちにハローワークに連絡して、指示を仰ぐようにしてください。

 

在留資格の種類や雇用形態は問わない

すでに説明した通り、外国人雇用状況の届出は原則として「在留資格の種類」や「雇用形態」に関係ありません。正社員やアルバイトを含め、すべての外国人労働者が対象になります。また直接の雇用契約がある場合に限らず、実質的な雇用関係が認められる場合も届出が必要です。

 

「外交」「公用」「特別永住者」の在留資格を持つ外国人や「帰化」した外国人でない限り、届出を忘れないようにしましょう。

離職時の届出忘れに注意

外国人雇用状況の届出は雇用に関する届出ですから、「雇い入れ」だけでなく「離職」の際にも必要となります。もちろん、離職の際の届出を忘れた場合も罰則の対象です。うっかりミスをすることがないよう、十分に注意してください。

 

まとめ

今回は「外国人雇用状況の届出」について、内容や対象、手続方法などを中心に説明しました。ごく一部の在留資格で例外はあるものの、原則として外国人雇用状況の届出は「雇用者の義務」で、「雇用されるすべての外国人労働者」が対象です。うっかり届出を忘れて罰則を受けることがないようにしましょう。

 

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富樫 眞一
資格

2003年 技術士(環境部門)登録
2003年 薬学博士号登録

2019年 行政書士登録

2019年 入国管理局申請取次行政書士登録

2020年 特定行政書士登録

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