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日本に滞在する外国人は、在留許可の範囲内でのみ活動するのが原則です。一方で留学や家族滞在など、就労系の在留資格以外で滞在する人も例外的に働ける「資格外活動許可」という制度も用意されています。今回はこの資格外活動許可について、具体的な内容や申請手続きの流れについて説明していきます。

資格外活動許可について

資格外活動許可とは、在留資格で認められている活動以外で「収入・報酬を受ける活動」を許可する制度です。

そもそも日本では、原則として在留資格の範囲内を超える活動は認められていません。特に非就労系の在留資格を持つ外国人が仕事をすると、「不法就労」として処罰の対象となります。具体的には「留学」の在留資格のまま日本国内の企業に就職したり、「法律・会計業務」の資格で介護の仕事に就いたりすることなどはNGです。

ところが実際には多くの留学生たちが、学費や生活費を補うためにコンビニや外食チェーンなどで働いています。これを可能にするのが「資格外活動許可」というわけです。

 

資格外活動許可の要件

資格外活動許可にはいくつかの条件があります。

 

(1) 申請人が申請に係る活動に従事することにより現に有する在留資格に係る活動の遂行が妨げられるものでないこと。
(2) 現に有する在留資格に係る活動を行っていること。
(3) 申請に係る活動が法別表第一の一の表又は二の表の在留資格の下欄に掲げる活動(「特定技能」及び「技能実習」を除く。)に該当すること。(注)下記2(1)の包括許可については当該要件は求められません。
(4) 申請に係る活動が次のいずれの活動にも当たらないこと。
 ア 法令(刑事・民事を問わない)に違反すると認められる活動
 イ 風俗営業若しくは店舗型性風俗特殊営業が営まれている営業所において行う活動又は無店舗型性風俗特殊営業,映像送信型性風俗特殊営業,店舗型電話異性紹介営業若しくは無店舗型電話異性紹介事業に従事して行う活動
(5) 収容令書の発付又は意見聴取通知書の送達若しくは通知を受けていないこと。
(6) 素行が不良ではないこと。
(7) 本邦の公私の機関との契約に基づく在留資格に該当する活動を行っている者については,当該機関が資格外活動を行うことについて同意していること。

出入国在留管理庁webサイト「資格外活動許可について」より引用

 

もう少し分かりやすくすると、

  • 現在の在留資格の活動を邪魔しない(留学生がフルタイムの仕事に就くことはNG)
  • 現在の在留資格の活動をきちんと行っている(留学生として学校に通っているなど)
  • 違法な仕事ではない
  • 風俗などの仕事ではない
  • 退去強制の手続きを受けていない
  • 素行が不良でない(犯罪行為をしていない、納税義務を果たしている)
  • 留学生や研修生なら、所属機関の同意をもらっている

といった具合です。なお許可を受けられる場合も「1週間あたり28時間以内」といった制限があるため注意が必要です(時間の制限については後ほど説明します)。

 

許可される活動・許可されない活動

一般に、資格外活動許可を受けやすい活動(仕事)としては、以下のようなものがあります。

  • コンビニや外食レストラン、スーパーなどのアルバイト
  • 英会話学校の講師
  • モデル活動

逆に許可されない活動は、主に以下のようなものです。

  • 風俗営業(スナックやキャバクラ、ゲームセンター、パチンコ店など)
  • 性風俗営業

どのような活動が資格外活動許可の範囲になるのか・ならないのかは、判断が難しいケースも少なくありません。不法就労とみなされないためにも、少しでも不明な点があれば出入国在留管理庁(入管)や在留許可申請を扱う行政書士などに問い合わせることをおすすめします。

 

許可が不要な活動について

本来の在留資格とは違う活動でも、条件次第では資格外活動許可が不要なケースもあります。

  • 無報酬の活動(収入や報酬を伴わないボランティア活動など)
  • 一時的な活動(単発の臨時講師や通訳など。謝金を伴うものでもOK)
  • 現在の在留資格の範囲内に収まる活動(「人文知識・国際業務」の在留資格で通訳として働く外国人が、「翻訳」のアルバイトをするなど)
  • 就労ではない活動(就労系在留資格の外国人が学校に通うなど)

ただしこれらの活動によって、本来の在留資格の活動が妨げられるのはNGです。あくまで在留資格の活動が優先されることを意識しておきましょう。

なお「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」の4つの在留資格については、もともと活動の制限がないため、どのような活動を行う場合も資格外活動許可は不要です。

 

資格外活動許可には2つの種類がある

資格外活動許可には「包括許可」と「個別許可」という2つの種類があります。

包括許可

包括許可とは、勤務先や業務内容を指定しない資格外活動許可です。たとえば留学生がアルバイトをする場合、包括許可があればアルバイト先を変更しても新たな資格外活動許可申請は必要ありません。

包括許可が認められる在留資格は「留学」と「家族滞在」、卒業した留学生が就職活動を行うための「特定活動」の3つです。

なお包括許可には「1週間あたり28時間以内」という時間制限があります。夏休みなどの長期休暇期間中は「1日あたり8時間」に拡大されるものの(留学生のみ)、この時間を超えると不法就労になってしまうため、アルバイトを選ぶ際は注意が必要です。

 

個別許可

具体的な就労先や、業務内容を指定する資格外活動許可です。就労系の在留資格を持つ外国人が資格の範囲外で副業をする場合…たとえば大学で働く「教授」の在留資格を持つ外国人が、民間企業の語学講師として働く場合などはこの許可が必要になります。

ちなみに個別許可では、いわゆる単純労働は認められません。また現在の在留資格の活動に対して、資格外活動の比率が大きいと判断される場合も許可されない可能性があります(おおむね「在留資格の活動時間の半分を超えるかどうか」が目安と言われますが、時間だけでなくさまざまな事情が総合的に判断されます)。

 

資格外活動許可の申請方法

資格外活動を行う際は前もって資格外活動許可を申請し、活動開始までに許可を受けておくことが必要です。

申請できる人

資格外活動許可を申請できるのは、原則として「本人」です。また本人の法定代理人や、本人の依頼を受けた「申請者が所属する機関の職員」「外国人受入れ機関の職員」「行政書士」なども、申請を行えます。

申請場所

在留資格変更許可の申請場所は、申請者の「住居地を管轄する地方出入国在留管理官署」です。具体的には、8つの出入国管理局と7つの支局、61の出張所のうち、申請者の最寄りの場所となります。

必要書類

資格外活動許可の申請に必要な書類は以下の通りです。

①資格外活動許可申請書(法務省のwebサイトからダウンロードできます)

②申請に係る活動の内容を明らかにする書類(職種・雇用期間・勤務時間・報酬額などを記載した雇用契約書などのコピー)

③在留カード(在留カードとみなされる外国人登録証明書を含む)

④パスポート(申請時に提示する)

⑤身分を証明する文書(本人の依頼を受けた者が申請を行う場合)

 

費用

資格外活動許可の申請では手数料は不要です。ただし行政書士などの専門家に手続きを依頼する場合は、2〜3万円程度の料金(報酬)が発生します。

 

手続きの流れ

申請書類の提出から許可までの流れは以下の通りです。

 

①本人などが必要書類を提出する

  ↓

②書類審査

  ↓

③許可の通知(通知書の郵送)

  ↓

④許可証の交付(在留カードがある場合は、裏面に資格外活動許可を受けている旨を記載)

 

審査期間

審査にかかる期間は、書類の提出から2週間〜2か月程度と幅があります。あらかじめ資格外活動に携わる予定がある場合は十分前もって申請することが必要です。

有効期間

資格外活動許可の有効期間は、現在受けている在留資格が満了する日までです。ちなみに現在の在留資格を更新しても、資格外活動許可は更新されません。もし引き続きアルバイトなどを行う場合は、資格外活動許可を再度申請する必要があります。

また個別許可を受けている人が新しい資格外許可を始める場合は、あらかじめ資格外活動許可を取り直す(申請し直す)ことが必要です。

資格外活動許可の注意点

ここでは資格外活動許可に関連した、いくつかの注意点を紹介します。

許可が取り消されるケース

資格外活動許可を受けても、要件を満たさないと判断された場合は許可が取り消されます。たとえば以下のようなケースです。

  • 資格外活動によって、本来の在留資格の活動が中断されている
  • 風俗営業や性風俗営業の仕事に就いている
  • あらかじめ許可された業種以外の仕事をしている(個別許可の場合)
 

不法就労の罰則

許可を受けないまま、あるいは許可を取り消された状態で資格外活動を行うと「不法就労」になります。不法就労の罰則は「強制退去」です。いったん強制退去処分を受けて本国に送還されると、その後5年〜10年は日本に入国できなくなります。

雇用者側の注意点

留学生などのアルバイトを雇う側は、雇用する際に相手が資格外活動許可を持っているかどうか、しっかり確認する義務があります。もし許可のない外国人を雇い入れた場合、それが故意であれ不注意であれ「不法就労助長罪」という罪に問われます。

不法就労助長罪の罰則は、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方です。

高度専門職1号の外国人が在留資格を更新する場合「在留期間更新許可申請」を行います。審査ではあらためてポイント計算が行われますが、基準(70点)を満たさない場合は更新が認められないため注意が必要です。

まとめ

今回は留学生アルバイトなどでおなじみの資格外活動許可について、制度の詳しい内容や申請方法、注意点などを説明しました。スムーズな申請のため、またうっかり違反して罰則を受けることがないために、この記事をぜひ参考にしてください。

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富樫 眞一
資格

2003年 技術士(環境部門)登録
2003年 薬学博士号登録

2019年 行政書士登録

2019年 入国管理局申請取次行政書士登録

2020年 特定行政書士登録

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