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在留資格にはさまざまな種類があります。中でも特に多いのが、外国人の就労を認める就労系在留資格、いわゆる「就労ビザ」です。この記事では就労ビザの種類や申請の流れ、就労ビザの注意すべき点や「よくある質問」などについて説明していきます。
日本で働きたいと思っている外国人の方や、外国人を雇いたいと考えている経営者の方なら、「就労ビザ」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。この就労ビザとは、日本で働くことができるさまざまな在留資格をひっくるめた表現で、実際には19の就労系在留資格に分けることができます。
ちなみに「就労ビザと在留資格は違うの?」という質問を受けることがありますが、ビザという言葉は在留資格と同じ意味で使われることも多いため(厳密には別モノですが)、この記事では「就労ビザは在留資格の一種」と考えていただいて構いません。
就労ビザ(就労系在留資格)という言葉があるくらいですから、当然、就労できないビザ(在留資格)も存在します。観光などの目的で利用される「短期滞在」ビザはその一例です。他にも「留学」や「研修」、「文化活動」、「家族滞在」などのビザで来日する場合も就労はできません。
一方で就労ビザではないものの、就労が認められる特殊なビザもあります。具体的には「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「特定活動」のことですが、これについては後ほど改めて説明します。
令和3年5月現在、就労を目的としたビザの種類は以下の通りです。
5年 / 3年 / 1年 / 3ヵ月無期限技能実習2号在留資格 | 対象となる外国人 | 在留期間 |
外交 | 外国政府の大使・公使・総領事・代表団構成員とその家族 | 外交活動の期間 |
公用 | 外国政府の大使館・領事館の職員や国際機関から派遣された人、およびその家族 | 5年・3年・1年・3ヵ月・30日・15日 |
教授 | 大学などの高等教育機関で研究や指導をする人(大学教授など) | 5年 / 3年 / 1年 / 3ヵ月 |
芸術 | 音楽・美術・文学など、収入を伴う芸術活動を行う人(作曲家や画家、著述家など) | 5年 / 3年 / 1年 / 3ヵ月 |
宗教 | 外国の宗教団体から布教や宗教活動のために派遣された人(宣教師など) | 5年 / 3年 / 1年 / 3ヵ月 |
報道 | 外国の報道機関との契約で取材等を行う人(記者、カメラマンなど) | 5年 / 3年 / 1年 / 3ヵ月 |
高度専門職1号 | 入国管理局が定める「高度人材ポイント制度」で70ポイント以上獲得し、以下の活動を行う人 イ:官民の教育機関、研究機関などでの教育・研究 ロ:自然科学・人文科学分野の専門知識や技術を生かす活動 ハ:企業や弁護士事務所、監査法人事務所などの経営・管理 | 5年 |
高度専門職2号 | 1号の資格で3年以上日本に滞在しており、さらに ・素行が善良である ・日本国の利益に合致するなどの資格条件を満たした人 | 無期限 |
経営・管理 | 日本で経営や管理を行う人(企業経営者など)※「法律・会計業務」に該当する事業を除く | 5年 / 3年 / 1年 / 6ヵ月 / 4ヵ月 / 3ヵ月 |
法律・会計業務 | 法律や会計などの公的資格に基づく活動を行う人(弁護士、公認会計士、行政書士など) | 5年 / 3年 / 1年 / 3ヵ月 |
医療 | 医療系の公的資格に基づく活動を行う人(医師、歯科医師、看護師など) | 5年 / 3年 / 1年 / 3ヵ月 |
研究 | 官民を問わず、日本国内の機関で研究を行う人(政府係機関や企業の研究者など) | 5年 / 3年 / 1年 / 3ヵ月 |
教育 | 小・中・高校などの各種学校で語学教育などを行う人(語学教師など) | 5年 / 3年 / 1年 / 3ヵ月 |
技術・人文・知識・国際業務 | 自然科学の専門技術者や人文科学の専門職従事者、外国人ならではの国際業務を行う人(機械工学の技術者、通訳、デザイナーなど) | 5年 / 3年 / 1年 / 3ヵ月 |
企業内転勤 | 外国にある関連会社から日本の会社に派遣される人(外国からの転勤者) | 5年 / 3年 / 1年 / 3ヵ月 |
介護 | 介護福祉士の資格に基づいて日本国内の機関で働く人(介護福祉士) | 5年 / 3年 / 1年 / 3ヵ月 |
興行 | 演劇・演芸・演奏・スポ―ツなどの分野で活動する人(俳優、歌手、プロスポーツ選手など) | 3年 / 1年 / 6ヵ月 / 3ヵ月 / 15日 |
技能 | 特殊分野で、熟練技能を生かして活動する人(パイロット、スポーツ指導者、外国料理の料理人など) | 5年 / 3年 / 1年 / 3ヵ月 |
特定技能1号 | 一定の要件を満たした上で、14の特定産業分野(介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業)で働く人 | 1年 / 6ヵ月 / 4ヵ月 |
特定技能2号 | 建設分野と造船・舶用工業分野で、熟練した技能を要する業務を行う人 | 3年 / 1年 / 6 ヵ月 |
技能実習1号 | 技能実習計画に基づき、技能習得を目的とした業務を行う技能実習生で、入国1年目の人(海外の関連会社等から受け入れる「技能実習生イ」と、監理団体経由で受け入れる「技能実習生ロ」がある。以下同じ) | 1年以内で、法務大臣が個々に指定 |
技能実習2号 | 技能実習計画に基づき、技能習得を目的とした業務を行う技能実習生で、入国2・3年目の人(所定の技能評価試験に合格する必要がある。以下同じ) | 2年以内で、法務大臣が個々に指定 |
技能実習3号 | 技能実習計画に基づき、技能習得を目的とした業務を行う技能実習生で、入国4・5年目の人 | 2年以内で、法務大臣が個々に指定 |
就労ビザを取得するには、申請書をはじめとする「必要書類」を揃える必要があります。必要書類は就労ビザごとに異なるため、あらかじめ日本の出入国在留管理庁に問い合わせるか、専門家に相談すると良いでしょう。
ここでは海外にいる外国人が新規就職するケースと、すでに日本に在留する外国人が転職するケースに分けて、就労ビザの申請〜取得の流れを説明します。
海外にいる外国人が日本で就職する場合、原則として母国にある日本大使館や総領事館を経由して就労ビザの申請を行います。国によって「窓口での直接申請」のみだったり、郵送やWeb経由での申請を受け付けていたりするため、あらかじめ確認しておきましょう。
外国人を受け入れる側(企業等)は、出入国在留管理庁の窓口で「在留資格認定証明書」を申請します。在留資格認定証明書とは「外国人が日本で行う活動の内容を証明」する書類で、正式な就労ビザの「予約票・引換証」のようなものです。
発行された在留資格認定証明書は、受け入れ側から外国人に送付されます。そして外国人は日本入国の際にこれを提示し、その後、正式な就労ビザが発行されます。
外国人が日本国内で転職する場合の手続きは、少々複雑です。転職前と転職後の職務が全く同じであれば就労ビザの変更は必要ありませんが、「全く同じ」かどうかを判断するのは本人(外国人)や企業ではなく、出入国在留管理庁です。安心して転職するためには、まずは外国人の「就労資格証明書」を申請して、審査を受けることが大事です。
転職の前後で仕事の内容が変わる場合は、転職後の職務に合わせて新しい就労ビザを取得しなければなりません。この場合は出入国在留管理庁の窓口で「在留資格変更許可申請」を行いますが、必ず「転職前に行う」必要があります。持っている就労ビザと現在の職務が食い違うと「不法就労」になってしまうため、十分注意してください。
就労ビザを変更する場合や就労ビザの有効期間を更新する場合は、出入国在留管理庁の窓口に申請を行います(変更の場合は「在留資格変更許可申請」、更新の場合は在留期間更新許可申請書」)。
ただし申請書を提出したからといって、必ずしも変更や更新が認められるとは限りません。審査の際には、さまざまな要素が総合的に考慮されます(以下は一例です)。
有効な就労ビザを持たないまま日本で働いた場合、不法就労として処罰されます。たとえば日本に密入国した場合や、転職などで許可されていない職務に就いた場合などです。
特に注意が必要なのは、就労ビザの有効期間切れです。就労ビザにはそれぞれ、5年、3年、1年、3ヵ月といった有効期間が設定されています。有効期間を更新しないまま就労を続けると、それが故意であれうっかりミスであれ、不法就労になります。
不法就労した外国人が退去強制(強制送還)の対象となり、その後は一定期間、日本への入国が認められません。思わぬペナルティを受けることがないよう、気をつけてください。
就労ビザ以外にも、日本での就労が認められる在留資格があります。
身分系在留資格には、就労ビザよりも自由な就労が認められています。基本的に就労内容(職務)に制限がなく、日本人と同じように自由な就労が可能です。
永住者とは、「日本在留10年以上」「素行が善良」といったさまざまな要件を満たした外国人に認められる在留資格です。永住者には在留期間の定めがないため、無期限に在留・就労することができます。
なお在留資格ではありませんが、外国人が日本国籍を取得する「帰化」の場合も就労制限(内容、機関とも)はありません。就労だけでなく、選挙権など日本人と同じ権利がすべて与えられます。
定住者とは、日系人やその子孫といった、特殊な事情や身分関係を持つ外国人に認められる在留資格です(詳しくは「在留資格「定住者」とは?永住者との違いや取得条件について解説」をご覧ください)。
定住者も就労内容の制限がありませんが、在留期間には「5年、3年、1年、6ヵ月」という定めがあります。このため有効期間切れによる不法就労に注意が必要です。
配偶者等の在留資格には、「日本人の配偶者等」と「永住者の配偶者等」という2種類があります。具体的には、日本人や永住者と結婚している外国人や、日本人の実子、永住者が日本で出生した実子などのことです。
これらの外国人にも就労内容制限はありません。ただし在留期間はどちらも「5年、3年、1年、6ヵ月」です。
特定活動とは、外国人それぞれの活動内容に応じて個別に許可される、ちょっと特殊な在留資格です。代表的なものとしては「入院のために来日」、「日本で就職活動」、「インターンシップに参加」といったものが挙げられます。
このように就労を伴う活動と就労と関係ない活動が混在しているため、就労が認められるかどうかは、パスポートに貼られた「指定書」によって判断されます。
就労ビザに関連して寄せられる質問のうち、よくある質問にお答えします。
いずれかの在留資格があれば日本に入国できます。ただし就労ビザや身分系在留資格がなければ日本での就労はできません。
在留資格の内容は「在留カード」に記載されます。すでに日本にいる外国人を雇う際は、必ず在留カードを提示してもらい、在留資格の内容や有効期間を確認してください。
留学生や家族滞在ビザの方がアルバイトをする場合(就労ビザを持っている方が全く別のアルバイトをする場合も)、「資格外活動許可」を取得する必要があります。
資格外活動許可とアルバイトについては「就労ビザでアルバイトは可能?在留資格との違いや申請方法について解説」をご覧ください。
就労ビザで日本に滞在する方の家族には、原則として「家族滞在」の在留資格が与えられます。ただし「外交」「公用」については、家族にも同じビザ(外交、公用)が認められます。一方「特定技能1号」と「技能実習」については家族滞在は認められません。
日本で働く外国人には社会保険への加入が義務づけられています。なお厚生年金保険に6ヵ月以上加入していた場合は、帰国後2年以内なら最大36ヵ月分の脱退一時金を請求できます。
今回の記事では、就労ビザの種類や特徴、手続き、就労ビザ以外の「就労できる在留資格」や「よくある質問」などについておおまかに説明しました。まずは就労ビザという制度の概要を掴むうえで、参考にしてみてください。
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2003年 技術士(環境部門)登録
2003年 薬学博士号登録
2019年 行政書士登録
2019年 入国管理局申請取次行政書士登録
2020年 特定行政書士登録
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